スウェーデンで生活していると、道行く人の話す言葉も肌の色も様々なことがわかります。
職場でも、両親が移民でスウェーデン語と親の出身の国、両方の言語を話せる人がいたり
私のように働くために移住した人や、自国の政治的な理由で移住した人がいたりします。
テレビやメディア、子供の同級生の親との会話を通じても、多くの言語が話せるというのは、その人の人生にとってプラスだという考え方があることを感じます。
私が妊娠してから子どもたちを多言語で育てることに決めるにあたって
病院から小さなパンフレットをもらいました。
タイトルは、多言語教育についてのちょっとしたアドバイス。
スウェーデンは歴史的、地理的な理由から、フィンランド語やサーミ語を話す人がいたり
両親のどちらかが、移民や難民のバックグラウンドを持っていたりすることが多い。
そんな人たちに向けてのちょっとした心構え、アドバイスが書かれていました。
多言語を話す子供を妊娠している人に対してのアドバイス
- 出産前の早い段階で、生まれてくる子どもにどれだけ自分の母国語を教えていきたいかを決めておく。
理解できればいいのか、話せればいいのか、それとも、書くことも読むこともできるようにしたいのか。
どれだけの時間とエネルギーを注ぐことができるか考えておく。
周りの家族や親族にも話しておくと良い。 - 話せば話すほど、読めば読むほど、書けば書くだけ、言語は上達する。
- スウェーデン語の小学校に入学する場合は、入学する前にスウェーデン語を学ぶ機会を作るようにする。
親としてどうやって多言語を話せるように働きかけをするか
- もし両親とも違う言語を話す場合、両親ともが、お互いの言語に対して前向きな姿勢を持つこと。
- 片方の親がスウェーデン語を話す場合、もう片方の親がスウェーデン語を話すことに関して前向きな姿勢を持つこと。
- 親自身がスウェーデン語を話せなくても、自分の国の言葉に対して誇りを持つこと。
- 子どもに対して、いつも同じ言語を話すこと。
スウェーデン語が家庭の共通言語でなくても、いずれは学校や友達を通じて、スウェーデン語が強くなる。 - 親の話す言語を身につけるためには、同じ言語を話す大人だけではなく、子どもとも接する機会を持つと良い。
多言語の子どもたちの言葉の発達にはどういう傾向があるか
- 多言語の子どもたちの言葉の発達は、ひとつの言語話す子どもに比べて遅くなる傾向がある。
- 3歳になるくらいの段階で家庭で話されている言葉を理解することができるようになり、
ひとつの言語を話す子どもより早い傾向がある。 - 言語が混ざることは多言語家庭の中では良くあること。
- 子供が話す言語は子供の人生の転換期や人間関係により大きく左右されることになる。
- 例えはスウェーデンに住む、アラビア語を話す子供のアラビア語は、実際にアラビア語を話す国の子供ほどは上手に話せない傾向にある。親が環境や文化によって与えられる影響が大きいためと考えられる。
- 親の話す言葉が話せるのにも関わらず、子供が一時期スウェーデン語を話すことは多々ある。
前述したように、人生の転換期や人間関係によるもの。
そして最後に一文、
子供を多言語で育てることは難しいかもしれませんが、もちろんそれだけの価値があります。
とありました。
小学校一年生に上がる段階で受けられる無料の母国語教育
こちらの学校は0年生から始まりますが、1年生に上がる段階で無料で母国語教育が受けられます。スウェーデン語で、Hemspråk あるいは Modersmålsundervisningと呼ばれるものです。
小さな一言に勇気づけられる
私の子供たちは、日本語、ウクライナ語、英語、スウェーデン語の4言語を耳にする生活を送っています。
特に小さい頃は今後、ちゃんとスウェーデン語が話せるようになるのか、不安になりつつも上に書いたパンフレットを信じて、私たちなりのやり方でこの多言語生活を続けてきました。
今でもしっかり覚えている子供たちの保育園の先生の言葉。
「子供たちは日本語もウクライナ語も話せるのね!頑張って続けてね!」
すごく勇気づけられた、と伝えると、先生自身、お母様がフィンランド人だったそう。
お母様がフィンランド語で話してくれなかったことを先生は残念に思っているからこそ、
私たちを応援したいんだと話してくれました。
今でも私たちの子供たちの日本語のてにをはがあやしかったり、スウェーデン語でどうしても発音できない音があったりします。4言語あるのでいつまで続けられるのかは分かりません。
でも言葉がわかったり、いろいろな国の人と話せることは楽しいことです。
英語で十分に足りるという人もいるかもしれないですが、
私はその土地の言語で話すと、人は英語を話す時よりも心を開いてくれるような気もしますし、その人が言いたいその時の気持ちを伝えやすいと感じます。
言語それぞれにその言語にしかない表現や文化を感じると、言葉って面白いなと思います。
その楽しさを私たちの子供たちは生まれた時から知っている。
私はうらやましいなあとつくづく思います。